デジタルトランスフォーメーション(DX)
この言葉を聞かない日がなほどに、世間でデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が叫ばれています。
“デジタルトランスフォーメーション”というキーワードのGoogleトレンドによるインターネット上での検索ボリュームの推移ですが、この数年で大幅に拡大しており、世間の関心の高まりがお分かりかと思います。

※Googleトレンド
そこで今回は、調剤薬局におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)、ICT化について、考え、DXを推進するプロダクトを調べてみましたので、共有できればと思います。
目次
調剤薬局におけるDXとは?まずは定義をおさえよう
私自身、今までは「DX」について「IT化することでしょ?」という程度の認識でしたので、勉強してみました。
まず、DXという概念は、2014年にエリック・ストルターマン教授(スウェーデン・ウメオ大学)が提唱しました。
エリック氏によると、DXについて「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と定義しています。
また、経済産業省が2018年に出したレポートに用いられている定義によると、
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
経済産業省:2018年12月「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」より
要は、「ITを活用して、企業を変革させ、競合優位性を確立すること」ということになります。
単に「IT化する」ことは手段であり、そのさきに目指すべきゴールがあって初めて、DXとなるということがわかります。
調剤薬局においても、電子薬歴システムや、オンライン服薬指導のシステムなどが徐々に普及しつつあり、ITツールが浸透しつつある状況だと言えます。
しかし、単にそれらのツールを使うだけではなく、「それらのツールを活用し、調剤薬局の組織・ビジネスモデルを変革させ、競合優位性を確立すること」を目指すことこそが調剤薬局におけるDXなのだと言えます。
なぜデジタルトランスフォーメーション(DX)が推進されているのか?
なんとなくDXが重要なのはわかるけれど、なぜ、ここまで推進されているのでしょうか?
こちらも経済産業省のレポートから引用しますが、「2025年の壁」として、このまま日本のDXが進まなければ、
・ビジネスモデルを市場に合わせることができず競争に負ける
・システムの維持管理費の高騰
・システムの維持管理不足
と言った危機的状況を招き、
「2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある」と警告しています。
また、実際に国内外の大企業がDXによってビジネスを変革し、成功を収めている事例が出てきていることもあり、DXを推進すべきであるという認識が国全体に広がっていると考えられます。
そのため、日本は国を挙げて、DXをの推進していきたいと考え、予算を割いて、ガイドラインの策定や、DX人材の育成になどに力を入れています。
調剤薬局のデジタルトランスフォーメーション(DX)の普及状況
これまで、医療業界はこのデジタルトランスフォーメーション(DX)が遅れている業界であると言われてきました。
しかし、国としても薬局のDX、ICT化の推進をしており、年々その必要性が現場でも浸透してきています。
厚生労働省の「患者のための薬局ビジョン」では、「対物業務から対人業務へ」「かかりつけ薬局としてのICT化の推進」を明文化しています。


引用:厚生労働省「患者のための薬局ビジョン」より
実際、レセプトコンピュータ、電子カルテ・電子薬歴システムの普及を皮切りに、徐々にデジタルトランスフォーメーション(DX)やICT化が進んでいきましたし、今回の新型コロナウイルスのパンデミックによって、オンライン診療・オンライン服薬指導の需要が高まったことで、医療業界でもさらにデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進がされるようになってきました。
実際、厚生労働省「かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書」によると、薬局の電子薬歴システムの普及率が70.9%、電子お薬手帳の普及率が約48%であり、どちらのシステムに対応している薬局は全体の約43%となるようで、まだまだ普及の余地はあるようです。


引用:厚生労働省「かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書」
※ただし、医療機関の電子カルテ普及率が35%程度であることからすると、薬局業界はより、DXへの意識が高いと言えるかと思います。
調剤薬局のDXの事例
では、調剤薬局では、どのようにDXを考え、進めるべきでしょうか。
事例としては、下記のようなものが挙げられると思います。
●オンライン薬局
最も話題なのが、米国アマゾンが推進している“オンライン薬局”ではないでしょうか?
こちらも、オンライン、デジタルを活用し、薬局そのもののビジネスモデルを変革しているという点で、DXの代表的な事例かと思います。
中国の、JDヘルスは、オンライン診療〜薬の配達まで、一気痛感で提供しています。
●ロボット薬局
ロボット薬局は、日本でもいくつか事例があります。
動画がわかりやすいのでリンクを貼っておきます。
この“ロボット薬局”は、機械が薬剤師の代わりに医薬品の収集や、混ぜたり袋分けする調剤業務を行います。これにより、調剤業務の9割程度を削減することができると言われています。
調剤薬局のDXのポイント
しかし、一般的な調剤薬局では、これらの話題となっている”DXモデル”を、一気に導入すべきかというとそうは思えません。
その理由としては、DXについて明確なイメージを持つ、調剤薬局経営者がまだまだ少ないことがまず挙げられます。
また、患者さんもそのようなDXには混乱するでしょうし、薬剤師側からも「機械化によって自分たちの仕事が奪われてしまうのではないか?」という不安の声もあるようです。
しかし、日本でも確実にDXは進むと思います。
そのため、まずは、“DXの目的共有”と、それを目指した“スモールDX”を行うと良いと考えます。
● DXの目的共有
薬局経営の目標は、患者満足度を高め、多くの患者さんに選んでもらうことです。
以前、患者満足度についての記事を書きましたが、患者さんは、薬剤師をはじめとした薬局スタッフさんのサービスを最も求めています。
しかし、現場では、大量の業務に追われ、十分に患者さんとの時間を確保することができていません。
そこで、DXが活用できます。人は人にしかできない業務に注力し、そうでない業務は機械に任せてしまう。その結果、患者体験価値を“人”の力で最大化する。
これが調剤薬局のDXで目指す方向性だと考えます。
● スモールDXを進める
スモールDXは、私が思いついた言葉ですが(笑)、一気にDXするのではなく、業務フローを整理し、その業務ごとに少しずつDXしていくことを指します。
薬局には下記のような業務がありますが、それらを「人ではなく機械でできないか?」と考えていきます。
業務内容 | 代替案 |
処方箋の受け取り | オンライン、FAX |
お薬手帳の受け取り、確認 | オンライン、AI |
疑義照会 | 人、AI |
調剤業務 | ロボット |
調剤監査 | ロボット |
服薬指導 | 人 |
薬を渡す | 配達、ドローン |
お会計 | 自動精算機 |
こう考えると、それほど難しい話ではなく、すでに行っている方がほとんどなのではないでしょうか?
上記のように、DXと言ってもたいそれた発想や投資をするのではなく、“DXの目的共有”をした上で“スモールDX”を徐々に進めていく。という流れを少しずつ積み重ねていけば、患者さんの求めるDXが実現できるのではないかと思います。
薬局のDXを促進するためのプロダクト一覧
「DXを推進するツールってどんなものがあるの?」
という方のために、薬局のDXを促進するための製品を調べてみました。
これ以外にもあるかと思いますので、
「これがないよ!」「これも入れて!」
などありましたら是非ご教示ください😄
システム名 | 機能 |
alf-web | 発注サイト |
ASKAN | 在庫管理・発注システム |
forecast-epi | 需要予測型医薬品発注システム |
PHCの製品 | 調剤監査システム |
Audit | 調剤監査システム |
PHOTバーコード監査システム | 調剤監査システム |
湯山様々な製品 | 調剤監査システム |
ナビテック | 調剤監査システム |
湯山の調剤ロボット | 調剤ロボット |
Crestage-Pro | 分包機 |
日進医療機器の製品 | 分包機 |
株式会社トーショーの製品 | 分包機 |
キャノンライフケアの製品 | 分包機 |
いろいろある、、、 | ピッキングシステム |
ODSS | 在庫管理システム |
クリオネ | 在庫管理システム |
windyの製品 | 在庫管理システム |
ファーミー | 電子薬歴システム |
MAPs for PHARMACY | 電子薬歴システム |
Musubi | 電子薬歴システム |
kusudama | 電子薬歴システム |
solamachi | 電子薬歴システム |
PharnesV-MX | 電子薬歴システム |
Pharma-SEED EX | 電子薬歴システム |
Melhis | 電子薬歴システム |
電子薬歴ハイストーリーイーパーク | 電子薬歴システム |
ENIFVOICE | 電子薬歴システム |
Gooco | 電子薬歴システム |
ヘルスケア手帳 | 電子版お薬手帳 |
日薬eお薬手帳 | 電子版お薬手帳 |
お薬手帳Link | 電子版お薬手帳 |
薬局むけCARADAパック | 電子版お薬手帳 |
harmo | 電子版お薬手帳 |
お薬手帳プラス | 電子版お薬手帳 |
EPARK お薬手帳 | 電子版お薬手帳 |
kakari | 電子版お薬手帳 |
ポケットファーマシー | 電子版お薬手帳 |
Yadoc | オンライン服薬指導 |
Pharmas | オンライン服薬指導 |
curonお薬サポート | オンライン服薬指導 |
ホッペ オンライン服薬指導 | オンライン服薬指導 |
ヘルスケア手帳 | オンライン服薬指導 |
Musubi | オンライン服薬指導 |
CARADAオンライン診療 | オンライン服薬指導 |
NECのPOS | POS |
ブンギョウメイト | レセコン |
バイタルリンク | 他職種連携ツール |
レガロ | レセコン |
GOHL | レセコン |
ファーマアイ | 予約システム |
RESARVA | 予約システム |
E-PRAK薬の窓口 | 予約システム |
スマホな薬局 | 予約システム |
上記のように、薬局業界でも様々な会社やベンチャー企業が増えてきており、薬局のDX、ICT化につながる製品がどんどん生まれてきています。
最後に
今回は、薬局のデジタルトランスフォーメーション(DX)について、業界の流れから、実際の製品までを調べて紹介させていただきました。
このような業界の流れをどう読み取り、先ほどあげた製品をどのように現場に落とし込むか。
目的や解決したい課題を正しく設定し導入していくスキルが重要になっていきそうです。今後もブログなどを通して成功事例があればみなさんに共有していければと思います。
弊社では、自動精算機による業務改善はもちろん、そのほかの現場を改善するプロダクトの導入についても相談に乗っています。是非お気軽にご連絡ください。もちろん無料ですのでご安心ください。笑
それでは次回もお楽しみに!
By ファーマキューブの中の人